では以下で、4階建てオフィスビルの廊下&階段の、防滑シートはり工事の流れについて、説明していきます。
ちなみに、床材において「防滑(ぼうかつ)」とは、“人が誤って滑り、転倒した事が原因で起こる事故(怪我など)を未然に防ぐ”という意味合いです。
つまり、オフィスビルを利用する人々が安全に・快適に屋内を歩くために、とても大切なことなのです。
まずは、「巾木(はばき)」と呼ばれる、壁と床の取り合い部に施されている素材を、撤去しました。
カッターで切り込みを入れて、スクレーパー(ヘラ・コテとも)を差し入れて浮かせて、写真のようにピーッとめくります。
巾木の撤去にあたっては、誤って壁や手すりなどを傷つけることがないように気をつけました。
廊下・階段の下地は、経年劣化はあるものの、張り替えが必要なほど傷んでいるわけではありませんでした。
下地を剥がすことはしないで、代わりに下地調整材を塗布します。
後に塗るボンド材がしっかり密着するように、下地の表面をカチッと平滑に整えるイメージです。
塩ビ防滑シートを接着するための、ボンド材を塗っていきます。
今回は幅が狭い廊下なので、分割せず、1度で全体にボンドを塗ります。
(もし幅が広い廊下だったら、途中でボンドが乾きすぎてしまうために、区画を分けて「ボンドを塗る」⇒「シートをはる」⇒「ボンドを塗る」……という工程の繰り返しで進めていくことが多いです。)
ボンド材は、均等な厚みを意識して塗ります。外壁塗装や屋根塗装でも同じです!
1フロアあたり約15mの長さの廊下に、防滑シートをはっていきます。
今回使用する塩ビ防滑シートの種類は、オーナー様が色と柄をみて選ばれました。
室内~バルコニーまでの施工に向いた種類で、水に強く、硬い靴で歩いても傷が付きにくい・足音がしにくいという、特性を持ちます。
はった塩ビ防滑シートに、上からグーッと圧力をかけて、下地に密着させます。これが、「転圧」作業です。
職人が転圧作業に使う道具は、人それぞれ! 自分がもっとも使いやすい道具を選びます。
上の写真の時には、板木にクッション性を持つ素材を巻きつけた、自家製の転圧用道具を使用しています。
廊下と同様に、階段にも下地調整材・ボンド材を塗りました。
階段のシートはりも、廊下のシートはりと同様。
ボンドが完全に乾く前に手早く、そして丁寧にシートと下地を接着させます。
階段にはった塩ビ防滑シートの、転圧作業をしている様子です。
塩ビ防滑シート施工後の転圧作業は、とても大事。
下地とシートの密着が甘いと、内部でゆっくりと溜まっているガスに押し負けて、シートが膨れてしまいます。
そして床が膨れていると、そこを歩く人がつまずいてしまい、怪我をするおそれが出てきます。
ビルを使う人の安全のために、シートをしっかり転圧して膨れリスクを抑える必要があるのです。
膨れた部分を修理する方法(針で刺して空気を抜きボンドではり直す)もあるにはありますが、見栄え的にも工事の費用的にも、はじめから膨れないことが理想です。
新しいソフト巾木(今回は塩ビ素材)を、壁と床の取り合い部に、取り付けました。
シートと同じく、オーナー様が壁・床との色合いを考えて、選んでくださっています。
最後は、はったシートの端部処理、具体的にはシーリング打ちを行います。
上の写真は、シーリングのはみ出しがないように、丁寧にテープ養生を施した状態。
そして、シーリングを打っていきます。
防滑シートに使用するシーリングの役割は、シートの膨れが発生しないように、隙間から埃や水気が入り込むのを防ぐことです。
なお、シーリングの素材は、乾くとカチッと固まるエポキシ樹脂素材です。
ゴム質の柔らかいシーリングでは、掃除をするときに道具が当たると、すぐにボロボロになってしまいます……!
維持の仕方を想定して、最適なシーリング材で施工することも、防水工事業者の腕の見せ所な気がします。
シーリングが終わったところで、今回のビル廊下&階段のシートはり工事は、無事に完了しました!
工事完了後、オーナー様からは「いかにも昭和な感じのビルが今風の雰囲気になってよかったです!」という旨のお声をいただきました。
塩ビ防滑シートの耐用年数は、使用状況に左右されることが多いのですが、大体は10~15年くらいかと思います。
そして日光を少なからず受けるバルコニーでは、屋内のシートより劣化が早いことに注意しましょう!
シートは経年で少しずつ縮み、端部にも隙間ができてきます。隙間が気になったら、もしくは傷や膨れが気になったら、張り替え工事を検討することをオススメいたします。